籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
妖精と小さな魔女
陽の光で、ティアナは目を覚ました。
のそのそとカーテンの中から抜け出すと、椅子に腰かけてハーブティーを飲んでいたらしいマルセルと目が合った。
「おはよう。よく眠れた?」
「ええ。ハンカチ、ありがとう」
マルセルがわざわざ立ち上がり、ティアナをテーブルのところへ運んでくれた。
お礼を言ってハンカチを返すと、彼はティアナにもハーブティーを勧めた。
人形用の小さなカップは、アベルの作業エプロンに入っていたものだ。
アベルが仕事で作製していたドールハウスのキッチンセットのひとつ。
木で作られたそれはティアナには少し大きめだけれど、まるっこい形がティアナは好きだった。
片手で持つには重いので、両手で抱えて口元へ運ぶ。
ハーブの爽やかな香りが、ティアナの心を少しばかり癒した。
一口飲んで息をつき、マルセルを窺い見る。
彼は視線を落としてカップに口をつけている。
鏡を見なくても、ティアナの目が少し腫れていることは感覚的に確かなのに、マルセルはそのことに触れてはこない。