籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「何よ。わたしに見せつけたかったわけ?」
毒づくと、ジルはあっさりと頷いた。
「それもありますが、これの力を試してみたかったというのもあります」
そう言って、彼は腰に差した剣に手を添える。
それを見たティアナはぱっと目を輝かせた。
ティアナのそんな様子に気づき、ジルは剣をティアナから遠ざける。
「姉上、わかってると思いますが、触ったらだめですよ。大変なことになりますから」
「わかってるわ。……新しい魔法剣ね!」
ジルは頷く。
魔法剣には、魔力の源となる宝石が組み込まれている。
魔力が封じこめられた宝石は、術者が使うと大きな魔力を扱えるようになる。
そのため普通はジルの魔法剣のように武器に組み込んだり、女性であればアクセサリーに組み込んだりして身につけている。
「ジル、せっかくだからそれを使ってわたしに魔法を見せてちょうだい」
「いいですよ。今日は何の魔法にしましょうか」
ジルが剣を手にとり、微笑む。彼の笑顔に、ティアナもつられるように微笑んだ。
「おまかせするわ」
その言葉を合図に、ジルが鞘から剣を引き抜いた。
陽の光に反射して、剣先が眩く煌めく。
ジルが緩やかに剣先を振ると、噴水の水が、さっと高く上がった。
「わあ……!」
水はジルの指揮でいろいろな形に姿を変えた。
水しぶきが弾けて、細かな粒子となってティアナにふりかかる。
七色の虹を映し、きらめく水の魔法を見て、ティアナは体の奥底から何かが沸き出てくるような感覚に目を閉じる。
それはまるで、清らかな水が静かに湧き出るような。