籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「んん……はあっ」
呻き声をあげて、ベッドの中にいたアベルが飛び起きた。
「ああ、寝た。寝すぎて気持ち悪い」
「おはよう。そんなに眠れてうらやましいよ」
マルセルはカップにハーブティーを注ぎ、髪をわしゃわしゃと掻いているアベルに手渡した。
「なんだよ。マルセルは眠れなかったのか?」
「昨夜寝れたのは、またいつ調子が悪くなるかわからない君の薬を整えてからだった」
「そうよ。マルセルはあなたの為に夜中に外出しなきゃならなかったのよ。お礼を言いなさい」
わたしだって看病したのよ、と得意げに言うと、アベルはむっとした顔をティアナに向けて、勢いよくハーブティーを飲み干した。
「それは申し訳ないさ。でも俺は悪くないだろ、この宝石のせい……って、お前、目が腫れてるぞ」
アベルに言われて、ティアナは顔を隠すようにさっとそっぽを向いた。
「腫れてなんかないわよ」
「お前も眠れなかったのか? それともこいつと何かあった?」
「アベル、だいぶ調子がいいみたいだね」
マルセルはハーブティーを飲み干したアベルの手から空のカップを取ると、まとめてあった荷物をベッドの上に放り投げた。
「そろそろここを発とう。同じところに留まるのは危険だ」