籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
街を出て、隣の村へと続く道を歩く。
ティアナはマルセルの胸ポケットの中から少しだけ顔を出して、景色が少しずつ変わっていくのを眺めていた。
地面は石畳から砂利道に変わり、陰気な街からだんだんと離れ、人が見当たらなくなっていった。
その代わりに、絵本で見たような野花が咲く小道が現れ、ティアナは心弾ませた。
小さく無秩序に咲き乱れる花たちは、手入れの行き届いた庭園の花たちとはまた違った良さがある。
目を輝かせて見ていると、マルセルの手が目の前に伸びてきた。
「ティアナ、こっちへおいで。もう人目がないから、そこから出てきてもしばらく大丈夫そうだ」
頷いて、ティアナはマルセルの手の上にマルセルの肩の上に乗せてもらい、街からどれくらい離れたのか確かめようと後ろを振り返った。
「おい」
後ろを歩いていたアベルがティアナに声を投げかける。
「宝石を探してるんだよな?」
「そうよ。あと2つね。あなたの腕にくっついてるのがアメジスト。あとは確か、ルビーとサファイアだったと思う」
自分の首にかけたままのリングを確かめながら、記憶を頼りにそう答える。
「どの方角にあるかわかってるのか?」
「わからないわ」
「なあ、これもうはずしていい?」
「まだだめ! もう少し様子をみなくちゃ」
自分の腕にくっついたままの宝石をはずそうとするアベルを慌てて制すると、アベルはうんざりした声を出しながら、手を頭の後ろで組んだ。
「こんなひとっかけらの宝石をあと2つ探すんだろ? 長い旅になりそうだ……」