籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
またしばらく歩き続けていると、子どものはしゃぐ声が聞こえてきた。
小道の脇に広がる野原で、5人の子どもがボールを投げて遊んでいた。
年齢もさまざまで、小さい子は3つくらいに見える。
中でも一番わんぱくそうな男の子が蹴ったボールが、こちらに向かって飛んできた。
ちょうどマルセルの頭上のほうに軌道を描き、マルセルは手を伸ばしてそれを受け止めた―――はずだった。
「え!?」
ティアナは口をぽかんと開けて、ボールの行方を目で追った。
マルセルは確かにボールを受け止めたように見えたが、ボールは彼の手を掻い潜り、代わりにアベルの手の中にすっぽりと納まった。
「え? 何、今の?」
きょとんとしているティアナに、アベルはなんてことない顔をして、子どもたちのほうへボールを投げ返してやった。
「昔からこうだ、こいつは。あんまり動けるほうじゃないんだよ。……今のはちょっと力加減が弱かったぞ」
そう言ってマルセルの肩を軽く叩く。
「これでもだいぶましになったほうだよ。前は掠めもしなかった」
「今のだって掠めてた?」