籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
あきれながら、ティアナはマルセルが前にも塀をよじ登れなかったことを思い出した。
マルセルには体を使うことは任せないほうがいいのかもしれない。
「あの、お兄さんたち……っ」
女の子が一人駆け寄ってきた。
あの中で一番年上のお姉さんのようだ。
ティアナは急いでマルセルのポケットの中に身を隠す。女の子は息を切らしながら、キラキラした目でこちらを見上げている。
「ねえ、もしかして、旅の人?」
「そうだよ」
マルセルが腰を屈めて彼女と目線を合わせると、彼女はさらに目を輝かせた。
「この先は街まで遠いよ。わたしたちのお家においでよ」
屈託のない笑顔を浮かべる彼女に、マルセルとアベルは顔を見合わせた。
「いいの? お邪魔して」
「もちろん! 行きましょう」
彼女はヘレンと名乗り、遊んでいた子どもたちに集合をかけると、取り囲むようにして案内し始めた。
袖を引かれるようにして少女たちに連れられ、3人は森の中にある小さな小屋を訪れた