籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
小さくため息をつき、噴水の端に腰を下ろす。
「ねえジル、わたしはいつここから出られると思う?」
剣を鞘に収めようとしていたジルに問うと、ジルは何を言っているんだという顔をした。
「嫁ぐときには出られるんじゃないですか」
「いつになるのよ……縁談なんてひとつもないわ」
ジルの当然の返答に嘆くと、ジルはしらっとした目を向けてきた。
「ありますよ。山ほど縁談」
「ええっ!?」
驚きに声をあげると、失礼なことにラナも心底驚いた顔をしている。
それにしても、信じられない。
この様子ではラナも知らなかったようだし、先日訪れた両親だってそんなことは一言も口に出さなかったのに。
二人の様子を見て、ジルはおかしそうに口角をあげる。
「顔を見られないからか、絶世の美女だという噂がたっているようで。なんとリオランドの王も姉上を欲しがっているのだとか」
「いやよ。リオランド王ってもうおじさんでしょ? それに、エリアルがいるし」
「まあ、父上達はあまりこういった縁談をよく思っていないようですが」
(だから、縁談のことを言ってくれなかったのかしら)
ティアナがむっとしていると、ジルがふっと微笑んだ。
「実際、姉上は美人だと思います。だからこそ父上と母上が外に出したくないという気持ちもわかります」
「ジル……」
「けれども貴族たちは知らない……姉上が美人だけど野蛮だということを」
「美女の野獣ですものね」
「わたしのどこが野蛮なのよ!」