籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「何を探しているかも視えておる。青い石だろう? だがあれは少し力が強すぎて邪魔じゃったから、東のほうへ飛ばしてしまった」
カラカラと笑う老婆に、ティアナは目を丸くする。
「ここに指輪のサファイアがあったの!?」
「そうじゃ。しかしもうない。せっかくここへ立ち寄ってもらって悪いが、早いところここを去っておくれ。でないとわしとヘレンが王国に捕らわれてしまう。お前たちは目立つからね」
ふいに真面目な面持ちになったリュイの言葉に、そんな、とティアナがつぶやく。
リュイはまたカラカラと笑い、マルセルをちらりと見てからティアナに向かって人差し指を立てた。
「けれどこれも何かの縁。お嬢さんに教えてあげよう。この国で何が起こったか、起こっているか」
そう言って、杖を握りなおすとひとつ咳払いをし、目を瞑って語り始めた。
「この国には、王様がいらっしゃる。それはそれは、良き王で、賢王だと言われておった。しかしそれも昔のこと。王妃様がお倒れになってから、王は変わってしまわれた」