籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
おとぎ話でも話すかのような口調に、ティアナは熱心に聞き入っている。
「王妃様が床に臥してからは王宮にどこからか魔導士をお連れになって、王妃様の代わりに魔法を使わせた」
「魔法を使わせる?」
ティアナが首を傾げ、リュイは頷く。
「この国に、鐘が鳴っておるじゃろう。あれは何百年も昔から国を守る、守護の鐘。あの音色に乗せて国中に魔法が広がるのじゃ。この国で守護の魔法を使えるのは、王妃と魔導士くらいのものじゃった。今は、ただ、鳴っているだけじゃがな」
確かにこの国では毎日正午に鳴ると鐘が鳴る。
あの美しい鐘の音は、まるで賛美歌のようでティアナも気に入っていた。
「最初は鐘を鳴らすために王妃が王宮へ上がったところを、王が見初めて王妃とした。その王妃が使えなくなったものだから、今度は魔導士を呼び寄せた。そして魔導士も消え―――」
「今度は国中の魔力を持つ者を集め、守護の鐘を鳴らそうとしてるって?」
リュイのものではない声が割り込んできて、3人は驚いて声がしたほうを見る。
そこには、フードを被った若い男が腕を組んで壁に寄りかかっていた。
「ばあさん、今の話、ひとつ訂正。王は王妃をただ使ってたわけじゃない。愛していたんだ」