籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
「あなたは……!」
見知った姿に、ティアナはマルセルの肩の上で後ずさった。
驚きに固まる3人に、男は笑って人差し指を立てる。
「ああ、もうひとつある。王は鐘のために魔力を集めているわけじゃないんだな、これが」
そう言って、深くかぶっていたフードをさっと脱いだ。
この声。
紅い瞳。
目の下の銀の蝶。
間違いなく、ティアナに指輪を渡したあの男だ。
「なんと。このわしが存在に気づかないとは……」
「ふん。老いぼれの、魔力も残り少ないババアに用はない。用があるのはそこの2人だ」
ぴっ、と男に指をさされ、マルセルもティアナも身構える。
「さあ、一緒に来い」
そう言うとともに、男の指先から眩い光が放たれ、マルセルは間一髪のところでそれをよけた。
座っていた椅子は弾けとび、ティアナは恐怖に悲鳴をあげる。
「ああ、今のではだめか……殺してしまったら意味がない……」
ぶつぶつ言っている男を後目にマルセルは部屋を飛び出し、寝ていたアベルを叩き起こす。
「うう……なんだよ?」
「ここから逃げる。ティアナ、その指輪に逃げたいと願って」
ティアナは首を横に振り、指輪に強く手をかけながら座り込んだ。