籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
さっきからマルセルがせっせと洗っていたものが前に着ていたもので。
今別のものを着ている、ということは。
「俺はやめとけって、言ったんだぞ」
アベルの言葉が引き金となり、ティアナは悲鳴をあげて床に転がっていた豆をマルセルに投げつける。
「どうして? もう君の体は出会ったときに拭いてるし」
「初耳よ!!」
衝撃の事実に顔を真っ赤にしながら豆を投げ続ける。
マルセルは豆を避けながらウツボカズラがどうのと言い訳を言っていたが、恥ずかしさで耳に入らない。
アベルはあきれたように2人のやりとりを見ていたが、やがて溜息をついてひとり横になった。
さんざんわめき散らしたあと、さすがに疲れたティアナは隅のほうでふてくされることにした。
「ごめん、ティアナ」
「……」
「もうしないよ」
謝るマルセルの声を背中で聞きながら、ティアナはワンピースの裾を握りしめる。
知らない間にマルセルに見られていたことが、とてつもなく恥ずかしくてわめかずにはいられなかっただけで、別にもう怒ってはいない。
ただ恥ずかしいのとあれだけわめき散らしたあとにどういう態度をとったらいいのかわからなくて、そっぽを向くしかできなかった。