籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
翌朝、ティアナたちは麦畑を発ち、サファイア探しに取り掛かった。
「一体どこにあるのかしら。でも絶対この近くにあると思うとやる気がでるわね」
指輪が光らないか時折チェックしながら、ティアナは胸を弾ませた。
アベルはさんざん寝たくせに、まだ眠そうに大きなあくびをしている。
風が吹き、束ねきれなかったマルセルの髪が肩に座っていたティアナを掠めていく。
「前から思ってたんだけど」
ティアナは顔をあげ、マルセルに声をかける。
「それ、いつまで続けるつもり?」
マルセルの髪を指さした。彼の髪は相変わらず地味な茶色に染められたままで、眼鏡もかけ続けている。
マルセルは自分の髪を指でつまみ、ふっと笑った。
「ああ、これ。もうあんまり意味がないような気がするけど、念のためにね」
「ふうん」
ふとマルセルのきれいな金髪を見てみたい気持ちになっていたティアナは、少し残念に思った。
「ティアナは髪が赤くて綺麗だね」
「そうでしょ? 自慢の髪なの」
「お前こそ染めたらいいんじゃないのか。それじゃ目立つだろう」
眠そうにしていたアベルが口を挟む。
「ええっ、いやよ。絶対に染めないわ。アベルこそ染めたらどうなのよ」
「俺はいいんだよこれで!」