籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
そんな会話をしているうちに、指輪が何の反応も示さないまま街までたどり着いてしまった。
はしゃぐ子どもたちが駆け回りながら目の前を通り過ぎていく。
前に訪れた街よりも、ここは活気があるようだ。
建物も多く、どこから手をつけたらいいのかわからない。
「誰かに聞いてみるか。何か変わったことが起こらなかったか……」
アベルが腕を頭の後ろで組み、そう言ったときだった。
「どうしましょう、どうしましょう……困ったわ」
女性の途方に暮れた声が聞こえてきた。
声のしたほうを見ると、病院の前でわかりやすく狼狽えている女性がいる。
「どうかしましたか、お嬢さん」
何の迷いもなく声をかけにいくマルセルに、ティアナは肩を竦めた。
「お嬢様が急に高熱を出して寝込んでいらっしゃるんです。医者に診せても、原因がわからず治療の施しようがなくて、診察を断られてばかり……」
3人は顔を見合わせた。
これは、もしかしなくても。
アベルが頷き、マルセルは女性に向き直る。
「すぐに診せてください。僕の薬が使えるかもしれません」
マルセルの言葉に、女性はまるで神様にでも遭遇したかのようにぱっと顔を輝かせる。
「まあ、本当ですか! 私はお嬢様の侍女のローサと申します。では、さっそくお嬢様のところへ」