籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ディオンは琥珀色の瞳でマルセルたちを一瞥して、屋敷の奥の部屋へと案内した。
部屋の中では、少女が真っ白なベッドの上に横たわっていた。
「妹のパフィだ。2日前から急に熱を出して寝込んでいる。どの医者に診せても原因不明で治せないと言うばかりで、手の施しようがない」
ティアナはいつも通りマルセルのポケットに身を隠したまま、ベッドに横たわる少女を見下ろした。
伏せられた瞼は金色のまつ毛に縁どられ、金色の髪は扇のように広がっている。
熱のせいで汗を浮かべる頬は赤く染まり、その唇は苦しそうに呼吸をしている。
ティアナの首にかけられた指輪が光り、ティアナはあわてて光が漏れないように手で宝石を覆い隠した。
やはりパフィの具合が悪いのは、宝石が影響しているようだ。
人が来たのに気づいたのか、彼女がうっすらと目を開けてそのエメラルド色の瞳を見せると、それを見たマルセルがはっと息を飲み、固まってしまった。
「マルセル……?」
「……ああ、ごめん。ぼーっとしてた」
我に返ったマルセルはティアナをディオンたちに見つからないようにポケットから出し、パフィの寝ているベッドへとそっと滑り込ませた。