籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ローサは懐かしむように微笑む。
「お嬢様には、お兄様がおられたのですよ。小さい頃はその方を想って、よく泣いておられました」
「兄? ディオン様とやらじゃないのか?」
「ディオン様は、もともと旦那様のご子息です。お嬢様とは血が繋がっておりません」
アベルもティアナも、ローサの言葉に納得した。
どうりで2人は似ていないわけだ。
彼らは義兄妹だったのだ。
「……ローサ」
パフィが声をあげ、ローサはさっとパフィのもとへ駆け寄った。
パフィが手を伸ばし、起き上がりたいのだと気づいたローサは彼女が体を起こすのに手を貸す。
そしてパフィは、ゆっくりと体を起こした。
起き上がったパフィを見て、二人は息を呑んだ。
金色の髪、エメラルド色の瞳、少し儚げな表情。
ぱっちりと目を開いたパフィは、マルセルとうり二つだった。
そして、彼女はこう言ったのだ。
「……お兄様はどこ?」