籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~
ティアナとアベルは急いで宿へと駆け戻った。
「おい!」
「マルセル!」
部屋に戻るなり、2人は叫んだ。
「おかえり。どうしたの?」
ティアナとアベルの剣幕を前に、マルセルはテーブルの前に座ったまま、のんきに顔を向ける。
「どうしたのじゃないわ。あの子、あなたの妹だって言ってた。本当!?」
「お兄様と言っていたぞ、マルセルお兄様と!」
鼻息も荒く捲し立てる2人の言葉に、マルセルは一瞬目を見開いたがすぐに視線を下に落とした。
「……そのことだけど」
マルセルはおもむろに立ち上がり、テーブルの上にティーカップを並べ始める。
「ずっと秘密にしてたけど、話すべきかどうか昨日から考えて……やっと心が決まったよ」
2人が帰ってきたら話そうって思ってたんだ、そう言って微笑むマルセルに、ティアナとアベルは肩の力が抜ける。
「話して……くれるの?」
「もちろん。ゆっくり話したいから、お茶を淹れよう」
マルセルは手際よくお茶を淹れはじめた。