籠の中のプリンセス ~呪われた指輪と麗しの薬師~


「はい、ティアナ」


「ありがとう」


マルセルからアベル製ティアナ専用カップに注がれた紅茶を受け取り、一口飲む。


あたたかい紅茶に、ほっと息をついた。


「アベル……もうずいぶん薬を飲んでないみたいだけど、調子はいいのか?」


アベルにも紅茶を差し出しながら、マルセルは尋ねる。


「ああ」


アベルはそういえば、と言いながら口をつけた。


「昨日も今日も、なんともなかった。もう平気なのかもな」


「うまく順応したみたいね。よかった」


アベルが腕をまわしてみせる姿を眺めながら、ティアナは安心した。


アベルが元気になったのだから、きっとパフィも助けることができるだろう。

これで2人は宝石で死なずにすむ。


「本当に、よかった」


マルセルがそう言って笑った途端。


「!!」


急に体中が痺れ、ティアナもアベルも倒れこんだ。


アベルが落としたティーカップが音を立てて割れ、残っていた紅茶が飛び散った。


そんな中、マルセルだけが冷静に2人を見下ろしている。


< 99 / 161 >

この作品をシェア

pagetop