kuro
毎日が静かに過ぎてく。
しばらくの間真っ白だった世界に
一つの黒。
くろから逃げて二週間。
連絡先を交わした訳でもない私達は
偶然に会うこともなかった。
寧ろ今までがおかしかったのだと思う。
それでも私の頭の中で
黒色だけが未だに眩しく光っていた。
あの子は23歳だと言っていたけど、
普段は何をしてる子なんだろうか。
就職していても不思議じゃないし、
学生でも、フリーでも、
不思議には感じなかった。
そのかわり特定の想像もつかなかった。
もう一回位会えるだろうか。
本当にあの子のなかで私は
「お友達」なのだろうか。
そうだったら嬉しい私は、
何なのだろう。
そんなことを思いながら公園を通りすぎる。
今日も居なかったな、
と日課のように
少し残念に思っていると、
後ろから足音がした。
人が走ってきている。
避けてあげなければ。
端に寄ろうとした瞬間。
足音がパタリと止んだ。
そして鞄が物凄い勢いで
後ろに引っ張られた。
「ちょっと!......え。」
「ちょっと。は.....こっちの台詞。」
文句を言おうと後ろに首だけ捻ると、
黒。
いや、恐らく、くろ。
下を向いていて顔が見えないし、
息も凄いきれてるからか
声も掠れていたけど、
この雰囲気は、絶対くろ。
「どして....行っちゃうの。
僕、まってた。のに。」
「待ってた?」
本当に....?
それが本当なら。
「今日、居たの?」
「いた。」
でも....私今日も公園を覗いたんだけど...。
小首を傾げていると、
くろが不服そうに言う。
「ジャングルジムの上、遠くから見えてたよ、おねーさん。」
ジャングルジムの上.....。
ガードレールしかみていなかった私にはかなりの盲点であった。
というかまさか20歳を超えた男の子がジャングルジムの上にいる発想が無かったのだが....。
くろならあり得る。
実際にいたと言っているし。
...そして私は1つの疑問が頭によぎった。
「くろ、もしかしてジャングルジムの上よくいくの?」
「うん。
遊具はよく使う。」
......。
絶対近所の子供に変なお兄さん認定をされていることだろう。
「そうなのね。
私全然気づかなかった。」
まさか20歳超えた男の子が遊具で(以下略)であったから、私はいつも公園の入り口しか見ていなかったのだ。
「やっぱりストーカーさんじゃないね。
おねーさん僕結構見かけてたよ?
曇りの日はいつもここ来るから。」
「曇りの日?」
「そう。空がはっきりしない日。」
空がはっきりしない日......
確かに今日も曇りだし、
晴れの日に見たことはなかったけど。
本当に曇りの日だったんだと
予想が当たり少し謎が綻んだ。
「でもおねーさん気づかないから。
三回気づかなかったら追いかけようって、決めてたんだ。」
「三回目?」
「そうだよ。」
......偶然は私の知らないところで繰り広げられていたようだった。