kuro
gen
私の中指から指輪を引き抜くと、
「ちょっと座ってて」
とアトリエの扉をあけてリビングにある真っ白なソファーベットを、指差した。
私はコートを
脱いでいなかったことを思いだし、
それらを脱いでソファーにおき、そのままゆっくりとソファーに座った。
なんとなく落ち着かず辺りをきょろきょろと見渡す。
リビングの中央に大きな立て掛け式テレビ、ソファーベッドとテレビの間に 小さな丸いガラスの机。
ソファーベッドのすぐ裏はカウンター式のキッチン。
カウンターにはアロマキャンドルが
いくつか並べてあり、
きっとくろの甘い優しい香りは
これだと判明した。
くろのアトリエは恐らく仕事場だ。
カウンターにはキャンドルと
黒い名刺が束で置いてあるのをみて確信した。
一枚拝借すると
「 gen 」というネームに住所と電話番号にホームページらしきURL と下に小さく「silver accessory _gen 」と 載せられていた。
束から1枚抜き取ったそれをこっそり鞄のポケットに忍ばせた
。
くろは少なくともニートではない、
キッチンからチラチラ頭が見え隠れするくろを眺める。
そして少しだけニートかも、なんて考えを持っていた自分に怒った。
「はい。マシュマロ入りのココア。
飲める?」
目の前にことりとおかれた白いマグカップ。
「大好き。ありがとう。」
「....そっか。
僕も好き。これ飲んで待ってて?」
くろもココア好きなのか。
似合うかもしれない。
普段このココアを飲むくろを想像して
笑みがこぼれた。