kuro



「だってあの時のおねーさん
多分無意識に泣きながら僕のこと、
「きれいな色」って言ったから。」



泣いたことは忘れてほしかったし
そんな心の声が出ていたなんて消えてしまいたい。



「僕はもう玄とは呼ばれなくなっていたし、おねーさんから貰う音は心地よかったから、この「kuro 」はおねーさんだけのものだよ。」


そんな偶然あるのだろうか。

そんな奇跡、あるのだろうか。


私は、「kuro 」を「くろ」を独り占めしてもいいのだろうか。



私は、独り占め、したいのか。


目の前のくろを見る。

見つけたときから変わらない漆黒の瞳が私を痛いくらいに見つめている。
さらりと耳にかけられた髪も艶やかなままで。耳に存在するピアスも相変わらず輝いていて。
全てが黒で。

その全ての黒を、私はきっと。

独り占め.......したいんだ。





ぞわりと全身に鳥肌が立つ感覚がした。


私は出逢った瞬間からこの子が、欲しかったのだ。



なんて、こと。



真っ白な世界に突如現れた
「黒」。

頭から離れない鮮明な「黒」。




私はその「黒」が欲しくて
どうしようもないのだ。







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