kuro
少し不思議そうにしているくろに
もう一度話の続きを促すと
戸惑いながらも話し出してくれた。
「この鷹が凄くかっこ良かったから。
引きこもりで何もすることもなかったし、作ってみようかなと思ったんだ。
何度も何度も失敗して、やっと成功したものをつけて公園にでてみた。
そしたら知らない人に
素敵だと言われて。
嬉しくてあげようとしたら、
貰うのは勿体ないから、ブランドをたちあげたらどうかと言われたんだ。」
すごいシンデレラストーリーだ。
アメリカンドリームだ。
きっと真っ直ぐなくろに惹かれてその人も声をかけたのだろう。
くろは今まで知らないうちに
出会う人々を惹き付けてきたのだろう。
「その人が名付けたの?」
「ううん。」
「.....お日様の人?」
「うん。」
曇りも陰りも無い声で答えるくろ。
くろを知れば知るほど
苦しくなって、惹かれていく。
聞かなければ良いのに
聞いてしまう。
「そ...うだったんだね。
くろは今まで知らないうちに
いろんな人を惹き付けてきたんだよ。
だから、今のくろがいるんだね。」
苦しいのに、辛いのに、
泣きたいのに。
表に出せないのは大人の方だ。
やっぱり私は「狡い」のかもしれない。
大人になると嘘が上手くなる。
いちいち言葉の裏を考える。
いつもいつも言葉の奥を覚悟してる。
でもくろは違う。
今もくろは素直に喜んでいるのが手に取るようにわかる。
やっぱり欠陥人間なんてこと、あるはずない。
何て答えたら良いか考えていると
くろが先に口を開いた。
「おねーさん、おねーさんも、
僕を見つけてくれたんだよ。」
裏の無い、まっすぐな黒色。
ごちゃごちゃ考える自分に愛想がつきた。
苦しい、悔しい、悲しい、寂しい。
でも、それ以上にくろの視線が嬉しい。
それ以上にくろの言葉が聞きたい。
私は本当に狡い大人だ。
曖昧な態度で全部うやむやにして。
くろからもらうプラスの感情だけに目を向けて、汚い気持ちに目を背けてどこかにやることができるのだから。