kuro
9つも下の子にときめいて、
一喜一憂して、ぐるぐる過去を引き摺るおばさんなんだって、すぐに気づくことになるのだ。
そうに決まっている。
でなければこんな奇跡
私に訪れるはずがない。
何度も何度も虚勢をはる。
まだ訪れてもいない「崩壊」を恐れて、
何枚も何枚もバリアを作る。
自分でもわかっている。
くろがまっすぐだから
恐いのだ。
こんなにストレートに気持ちをぶつけてくる子に嫌われることが、たまらなく恐いのだ。
それをくろはわかっていない。
全然、わかっていない。
「おねーさん?」
このときめきも。
「聞いてる?」
この安らぎも。
「おーい。」
全部。
失う瞬間が恐い。
笑顔をはりつける。
嘘くさいだろうか。
気付かれてしまうだろうか。
気付いて、気付かないで。
くろに返事をするも曖昧になってしまう。
「どっか、痛い?」
心配そうな声。
嬉しい、苦しい。
こくりと頷く。
「どこ、痛い?」
「どこだろう.....。」
「え?!自分でわからないの?
困ったねぇ。」
そう言いながら向かい合わせになり
背中をさするくろ。
甘い香り、鷹のネックレス。
痛い。
痛いよ、くろ。
「治った。
も、大丈夫だよ。ありがとう。」
「......ヤダ。
もう少しこうする。」
「大丈夫だよ?」
「ヤダ。」
「くろー?」
「おとなしく!」
「....はい。」
......どうして変なところ頑固なんだろう。
額をくろに預けると喜ぶくろに
とりあえず甘えながら
頭を悩ませた。