kuro


「ヤダ。ダメ。」


「何が嫌なの?駄目なの?」


少しうつむきがちだった
顔が少しだけ上を向き、
目が合う。

いじけたような顔をしたくろが
ぎこちなく言う。


「おねーさんそんな風に
他の人に、笑っちゃ、ダメ。
僕、隣にいるのに他の人にばっか、
おねーさんが取られるの、ヤダ。」




...........なんて爆弾発言。

自分が言ってる意味がこの子は
分かっているのだろうか。


顔どころか体が熱い。


「そ、な、え.....。」


言葉にならない。


「おねーさんは、他の人の方が良い?」


「そんなこと。」


あるわけ無い。





小さく首を振る。


「良かった。
自分でもこんな気持ちになったことなくて、どうしようかと思って。」


「初めて....?」


なんだか嫌な予感がする。

「うん。僕、おねーさんが那都みて笑ったの見たとき苦しくて本当に死ぬかと思った。良かった、死ななくて。」


心臓あたりをさすりながら
本当に安心するように
そう答えるくろ。
.....これは、新手のボケではない。


くろは気づいていない。



いや、自分で言うのもどうかと思う。
自己申告することではない。
ましてそれこそくろは23歳の大人で
私の思ってることはちょっと
正直あり得ない。
自意識過剰なだけかもしれない。

こんなこと思うのは
ちょっとどうかと思うけど。

でも!

くろ、私のこと好きでしょう?!



こんなにあからさまに
私を好きだと言っているのに.....!!!!!!!!




くろは私を好きだと気づいていない。



いや、分かっていない!



どうしたら良いのだろうか.....。


普通はここで告白だが....伝わる気がしなかった。

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