kuro
次の日、私は本気を出してみた。
有給を使ってある学校の前で待ち伏せを謀っているのだ。
といっても一度しかみたことないし
名前も下の名前しかわからないから
一瞬も目を校門から離せないのだけれど。
これで裏門があったら終わりだ。
ただの不審者になるかもしれない。
そう考えただけで冷や汗がたれる思いがした。
それでも僅かな希望をもって
下校のチャイムが鳴るのを聞いた。
しばらくして生徒が続々と出てくる。
その一人一人に目をむける。
あの子も、あの子もそっちの子も。
違う。あの子じゃない。
何人もの人が下校していくがそれらしき子が現れない。
どうしよう。
見逃したのだろうか。
それとも部活か何かしているのだろうか。
今日は休みなのだろうか。
マイナスの考えばかりが頭を過る。
何しろかれこれ30分は経過してしまっている。
有給無駄にしたかもしれない。
凄い憂鬱な気持ちになりかけたその時。
騒がしい団体がこちらに向かってくるのが聞こえた。
あぁ、若いな、なんて遠巻きにみていると、ひときわ目立つ赤いパーカーの金髪がこちらを向いた瞬間目を見開いた。
かと思うと周りの子に何やら話しかけ
一笑い起こったあとこちらに向かって
小走りにやってきた。
見つけた。
見つけてくれた。
「おねーさん!どうしたんすか?」
今日の目的、那都君が自ら歩み寄ってきてくれた。
不審者にならなかったことに
一先ずの安心を覚える。
「ちょっと相談があります....。
いいですか?」
いきなり訪ねておいて
こんな願い聞いてくれるか不安に
なりながらも那都君にそう問えば
二つ返事で了承してくれたのだった。
「....で?」
「.....那都君ここにくるまでスムーズすぎないか。」
「あは☆昔の頃にこゆこと
多くて慣れてて。
でも昔ですから!
今はぶっちぎりえみり先輩一筋ですよ?」
ここは学校から離れたおしゃれなカフェだ。
この駅に住む私でさえ知らないまさに穴場スポットといった感じだが、ここの場所もさることながら誘導する速度が信じられなく速かったのだ。
慣れている感じ駄々漏れである。
最近の高校生は恐ろしい...。
そう、最近の若い子は高校生ださえ
恋愛をして時にこんなオシャレなカフェに訪れては女の子にアプローチしていくのだろう。
やはりくろは絶滅危惧種だ。
天然記念物だ。
恋愛スキルが皆無なのだ。
この弟と本当に血を分けたのだろうか...
似た容姿を持っているのに
本当に不思議。
だからこそ、この子に聞きたかったのだ。
「くろは、くろは誰かに恋したことはありますか?」