kuro



「っていってもなぁ。
玄斗に迫ったみたら?
ちょっと大人の階段踏んでもらおーよ。」



......迫る?


「それは、えっとどういった感じで。」


「え、もう玄斗程鈍ければ
直球にしてほしいことや、
恋人になりたいってことを
しっかり言う、しっかり誘惑する!」



「誘惑!!私結構年が.....」




若い子にそういうことするのは
若干気が引ける。


まして格好こそ真っ黒なくろだけど
彼自身は真っ白なのだ。

けれどまたしても那都君は楽しそうに
笑って言った。


「大丈夫だって。
そんなこと気にしてたら、これから何もできないよー?

年下は年上に手が出しづらいものなんだから。
頑張れ。
くろはおねーさんに触りたいはずだよ?」



「そうかな.....。」



「じゃなきゃあんなに抱きつかないから。」



確かに。

くろはよく私に抱きつく。

年を気にしているのは私の方ばかりなのかもしれない。



私が唸っていると
那都君は閃いたように
顔を明るくした。



「そうだよ!
抱きつこうとしたら、ダメってしてやればいいよ。

そういうことするのは、恋人同士だって言ってあげれば良い。


ね?
良い案でしょう?」



那都君がきらきらした目で
私を見る。

その台詞もなかなか恥ずかしいんだけど.....とは言えなかった。



確かにくろの中で何か変わるかもしれないし。




やっとみても良いのかも。


窓越しにカフェに
小走りでやってくる
可愛らしい女の子を見つけて
今日やっと私は微笑んだ。









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