kuro


もう少しで髪に触れる、というところで
くろが少し身を動かした。


私はその瞬間息が止まった。


そして数秒、
また規則正しい寝息。


どくどく心臓の音がうるさくなったが
そのまま止めることはなく
そっとくろの髪を耳にかけた。





さらりと音のしそうな髪は
耳に一瞬かかりそのまま手を離すと
後ろに流れていった。


耳が露になり
全てが見えた五つのピアス。


リングピアスが2つ
カフスが1つ、軟骨に1つ、
そしてブラックダイアモンド。


よくみるとリングに彫り物がしてあって、どうやらそれは蕀ともう1つは何か文字が彫ってあるらしい。


しかもブラックダイアモンドのピアスには三日月を模した縁がついていてお洒落なデザインなのだ。


恐らくくろが
全てデザインしているのだろう。


自分の作ったものが
自分の付けたいものなんて
なかなかなし得ないのに。


この子達にどれだけ時間を費やしたのだろう。


キラリと光るブラックダイアモンドに
吸い寄せられるように
ついに私はピアスに手を伸ばした。




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