檻の中
うわぁ、残酷……。
わたしはげんなりして目を背けた。
この生首男は、イシザキが殺したのだろう。
解体までするなんて──悪魔だ。
「コイツはボスを裏切り、組織の金を横領した罪でこのザマだ。依頼人からは拷問にかけて、苦しませながら殺すように言われたが」
イシザキはそこで言葉を切ると、ふんと鼻を鳴らした。
「俺は拷問など、時間の無駄だと思っている。一撃必殺……相手の急所を突いて、仕事を一瞬で終わらせるのが俺のやり方だ」
そう言って、わずかに唇の片端をつり上げる。
……それはそれで、冷静すぎて怖いけど。
「この首をボスに受け渡し、報酬を得たら任務完遂だ。……その前に、貴様の元に寄ってみたんだが」
「そ、そうなの……」
ジロリと横目で睨まれ、わたしは表情をひきつらせた。
怒りと言うより、殺意のようなオーラを感じる。
急所を一突きされて殺されるのではないか。
そんな怯えがイシザキにも伝わったのだろう、静かに冷笑を浮かべている。
「飼い犬に手を咬まれることほど、情けなくて腹立たしいことはない……」
意味ありげな言葉に、思わず息を飲んだ。
血の気がすぅっと引いていくような、嫌な感覚に襲われる。
それって、つまり……。
「俺が貴様の飼い主だと言うことを、二度と忘れないようにしてやる」
不敵な笑いとともに、イシザキが素早く動く。
「……うっ!」
脇腹に重い衝撃を感じ、わたしは呻きながら崩れ落ちた。
一撃必殺。
そんな四文字が脳裏に浮かび、すぐに消えた……。