檻の中
入ってきたのは、白衣を身につけた悪魔──ミスターBだった。
恐怖に固まるわたしを見るなり、奇妙なほど赤い唇をつり上げた。
「フフフ……。そんなに怖がらないで下さい。貴女を食べるわけではありませんから」
拷問映像を見せられたわたしにとっては、食べられるのと同じくらいの恐怖だ。
生きたまま解剖されるなんて、死ぬより辛いだろう。
「やめて……来ないで!」
わたしはすでに泣き声を上げていた。
傍らに立つミスターBの手には、見たことのない器具が握られていた。
ノコギリのような……。
あんなもので皮膚を裂かれたらひと溜まりもない。
「さぁさぁ、ジュリエット嬢。身体の力を抜いて、深呼吸して……」
「嫌! 触らないで」
わたしの腹部を撫でつけるミスターBに、心の底から嫌悪感が湧いた。
何人もの少女を拷問にかけてきた、汚らわしい手で触らないで……。
「もっと叫ぶがいいでしょう。私は、子羊たちの悲鳴を聞くとゾクゾクして震えが止まらなくなるのですよ」
抑えた声音で囁くミスターB。
わたしは泣きながら、首を激しく振った。
「やめて、お願い……」
ノコギリの刃が胸の上を虫のように這う。
少しの力を加えるだけで、皮膚が裂けて血が噴き出してしまうだろう。
ぞわりと肌が粟立ち、わたしは口から悲鳴を漏らした。