檻の中
何とも言えない沈黙が続き、わたしはそっとバスローブを掻き合わせた。
ミスターBの生首が転がっている血なまぐさい状況なのに、不思議と恐怖感が薄らいでいく。
七福神の放つ独特の雰囲気のせいだろうか。
とても鬼畜なことをするような、残忍な人物には思えない。
話も通じるし、紳士的な振舞いも堂に入っている。
あの映像は何かの間違いであって欲しい……。
「アレックスはもうここには来ない」
その呟きに思わず顔を上げると、七福神がこちらを見つめていた。
──真顔のままで。
「……どういう、ことですか?」
ごくりと唾を飲み、かすれた声で聞き返す。
嫌な予感がして、冷や汗が滲んできた。
「実は仕事で海外に行ってもらうことになって、アレックスから直々に頼まれたんだ。ジュリエットお嬢さん、あなたの面倒をね」
そこまで言うと、七福神はわざとらしいくらいの笑みを見せた。
そんなことって……。
わたしは落ち着かない気分になりながら、視線をさまよわせた。
イシザキへの尊敬や思慕など微塵もないが、七福神がその代わりとなると聞いて漠然とした不安に襲われた。
拷問されてしまうのだろうか……。
「ホホホ、心配しなさんな。あなたを悪いようにはしない。アレックスとも約束を交わしたんだ──男同士のね」
そう言ってウインクをする。
よほど不安げな顔をしていたのだろう、心を読まれたような気がして居心地が悪くなった。