檻の中



 バスルームから出ると、七福神がニコニコしながらコップを差し出してきた。



「喉が渇いただろう。お嬢さん、オレンジジュースは好きかな?」


「あ、ありがとうございます……」


 ちょうど喉の渇きを覚えていたわたしは、躊躇なくコップを受け取った。


 一気に飲み干し、息を吐く。


 甘酸っぱくて美味しいが、何となく苦味も感じるような……。


 七福神を盗み見ると、椅子に座ってステッキを磨いていた。



「飲んだかね?」


「はい」


 わたしは頷きながら、空になったコップをテーブルに置いた。



「よろしい。では、早速だがあなたにやってもらいたいことがある」


 急に淡々とした口調になる七福神に、わたしは胸騒ぎを覚えた。


 やってもらいたいこと……?



「簡単だから、気負わないで。ゲームをしよう」


 七福神はわたしを手招きし、向かいの椅子に座るよう促した。


 テーブルを挟んで向かい合う。


 七福神がテーブルの上に紙を広げ、傍らにサイコロを置く。



「今からやるのは人生ゲームならぬ、人命ゲームだ。命を賭けたゲーム」


「い……命を?」


 やっぱり恐ろしいことをさせるつもりなのだと、わたしは全身の血が引いていくような感覚にとらわれた。


 紙にはマスが振られており、短い文字が書かれている。


 『VS猛獣』、『針地獄』、『弾丸ロシアンルーレット』、『水中実験』、『血抜き』など……。


 わたしは愕然とし、目の前が暗くなるのを感じた。


 ゲームと名を変えただけの拷問に過ぎない。


 七福神の笑う顔が歪んで見えた。




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