檻の中
七福神の手に力が加わり、わたしの指を反対側に曲げようとする。
「痛い! やめて」
「小指なら痛くないだろう。一瞬だから我慢しなさい」
そう言って、小指をねじ曲げようとした。
骨を折られるなんて……。
わたしは早くもこの残酷なゲームに音を上げ、泣き出してしまう。
「……待てよ」
ふいに、俯いていた裕太が顔を上げた。
七福神の方をまっすぐ向き、据わった目つきで見つめている。
あの優しげな表情は見る影もなく、人相が変わっていた。
虐げられてきたのだから当然のことだろうが、別人のようになってしまった彼に寂しさを感じざるを得ない。
「何か言ったか、坊主」
「代わりに俺の指を折れよ」
冷たい口調とは裏腹に、わたしを守るような発言にハッとした。
裕太……。
「口を挟むんじゃない。男の指を折って何が楽しいんだ?」
七福神が訝しげに眉を寄せる。
「そのために俺を連れて来たんだろ。指の一本や二本、くれてやるよ」
「裕太、ダメ!」
挑発するような言い方をする裕太に、わたしは声を荒げて制止した。
しかし、彼はわたしの方を見ようとしない。
故意に無視しているのだろうか……。
七福神が鼻を鳴らし、腕を組んでわたしたちを交互に見やる。
「ふん……なかなか威勢のいい坊主だな。よし、じゃあお前に落とし前をつけてもらおうか」
そう言うと椅子から立ち上がり、裕太の後ろに回った。