檻の中
「206番、早く替えなさい!」
女医がヒステリックな怒鳴り声を上げる。
彼女は味方ではない……言う通りにするしかないようだ。
わたしは覚悟を決めて、うまく動かない指でボタンを外した。
「下着は……?」
「全部脱いで、そこのカゴに入れて」
坂井は気だるそうに髪を掻きあげながら、検査台の下にある白いカゴを顎でしゃくった。
恥ずかしい……。
突き刺すような鋭い視線を背中に感じながら、わたしは俯き加減に下着を脱いだ。
検査着に着替えると、まずは身長と体重を測定された。
何のためにこんなことをするんだろう?
視力、聴力、血圧、採血、尿検査、検便……。
目的の分からない“身体検査”に、わたしは屈辱さえ覚えた。
学校の健康診断とは訳が違う。
検査はさらに続き、胸部と胃のレントゲンとCTスキャン、心電図を行った。
胃のレントゲンとCTは年齢的に必要ないと思うんだけど……。
ここまで来ると人間ドックとそう変わらず、
連中の狙いが余計に分からなくなった。
「両膝を立てた状態で、検査台に寝て」
一通りの検査が終わってホッとしたのも束の間、坂井が薄手のゴム手袋を着用しながら素っ気なく言った。
言われた通りにすると、ベルトで手足を固定された。
「ちょっと……何?」
わたしは拘束されたことに驚き、頭をもたげた。