檻の中
自由への脱走
そんなこんなで、七福神は死んだ。
源ヒカルも死んだ。
今、生き残っているのはわたしと裕太とイシザキのみ……。
頼みの綱であるヒカルは、もうこの世にはいない。
それ以前に、イシザキに見つかったのだから脱出計画は失敗に終わったも同然だ。
タダでは済まされないだろう。
裕太が身体を起こして、ふらつきながら立ち上がろうとする。
「裕太、大丈夫?」
「……下がってろ」
わたしを後ろに追いやり、イシザキを睨みつける。
好戦的な態度を見たイシザキが唇をつり上げた。
「俺がその気になれば、お前らを葬ることなど朝飯前だ。下手に動いたら死ぬぜ、ロミオ」
拳銃を持ち上げ、真正面に立つ裕太に銃口を向ける。
確かにイシザキの言う通りかもしれない。
見殺しにせず、解毒剤を飲ませてくれたわけだし……。
「萌に何をした?」
肩を怒らせながら、裕太が低い声で言う。
イシザキがわたしの主であったことを知っているのだ。
「裕太……。わたしなら、別に何もされてないから」
“何も”と言うわけではないが、裕太の怒りを鎮めなければこの場を切り抜けられない。
イシザキがほら見ろ、と言わんばかりに眉をつり上げる。
「本当か? 萌……」
「う、うん」
裕太に顔を近づけられ、思わずドキリとしてしまう。
『二度と俺に話しかけるな』と言ったのは、本心からではなかったのだと今なら分かる。
わたしにわざと冷たくして、自分のことを心配させないようにしたんだ……。
「──誤解が解けたところで、真実を教えてやろう」
イシザキが拳銃を下ろし、ゆっくりと横を向いた。
何となく、以前よりもミステリアスっぽさが消えたように思うのは気のせいだろうか。
ますます、イシザキと言う人間が分からなくなってきた。