檻の中
エピローグ
少女はテレビで連日放送されている誘拐事件のニュースを見て、被害者の二人を可哀想に思った。
彼氏は指を切断されたが、名医による縫合手術を受けて見事成功した。
彼女はショックやストレスで一時的に声を失ったが、その後治療により声を取り戻した。
警察の調べによると、二人は地下世界に監禁されていたのだと言う。
それ以上の詳しいことは報道されていないが、少女は怖いなと思いつつ、一方では他人事のように聞き流した。
私は大丈夫。誘拐とか、監禁とか絶対にされない。
「行ってきまーす!」
少女は元気良くドアを開け、待ち合わせ場所に急いだ。
今日は、友達と久しぶりの遊園地に行く。
一日中子供のようにはしゃぎ回り、気づくと夕暮れが迫っていた。
「ねぇ、あれ何だろう?」
「ラビリンス……? 迷路かな」
少女とその友達はサーカスのようなテントの前で足を止めて、最後のアトラクションにしようか決めかねていた。
ふいにピエロが現れて、おどけた仕草で風船を差し出した。
「どうする? 入ろっか?」
「うん、面白そうだし入ろ!」
少女たちは風船を受け取り、楽しい気持ちのままラビリンスの中に足を踏み入れた。
ピエロはカーテンの内側から外の様子を注意深く見回すと、素早くラビリンスの中に姿を消した。
永遠の迷宮(ラビリンス)へようこそ……。
【完】