檻の中
エピローグ




 少女はテレビで連日放送されている誘拐事件のニュースを見て、被害者の二人を可哀想に思った。


 彼氏は指を切断されたが、名医による縫合手術を受けて見事成功した。


 彼女はショックやストレスで一時的に声を失ったが、その後治療により声を取り戻した。


 警察の調べによると、二人は地下世界に監禁されていたのだと言う。


 それ以上の詳しいことは報道されていないが、少女は怖いなと思いつつ、一方では他人事のように聞き流した。


 私は大丈夫。誘拐とか、監禁とか絶対にされない。



「行ってきまーす!」


 少女は元気良くドアを開け、待ち合わせ場所に急いだ。


 今日は、友達と久しぶりの遊園地に行く。


 一日中子供のようにはしゃぎ回り、気づくと夕暮れが迫っていた。



「ねぇ、あれ何だろう?」


「ラビリンス……? 迷路かな」


 少女とその友達はサーカスのようなテントの前で足を止めて、最後のアトラクションにしようか決めかねていた。


 ふいにピエロが現れて、おどけた仕草で風船を差し出した。



「どうする? 入ろっか?」


「うん、面白そうだし入ろ!」


 少女たちは風船を受け取り、楽しい気持ちのままラビリンスの中に足を踏み入れた。


 ピエロはカーテンの内側から外の様子を注意深く見回すと、素早くラビリンスの中に姿を消した。




 永遠の迷宮(ラビリンス)へようこそ……。






【完】






< 147 / 148 >

この作品をシェア

pagetop