檻の中
先ほどの男が姿を現し、わたしの手足の拘束を外した。
「こっちに来い」
「きゃっ……!」
がっしりと腕を掴まれ、勢い良く引っ張られる。
こんなに腕力のある男から身を守るすべを、わたしは知らない。
検査室の奥にあるドアを開けると、人気のない薄暗い廊下に出た。
「十分で身を清めろ。一秒でも遅れたら、裸のまま歩いてもらう」
男は白塗りの扉を開けて、わたしを力ずくで押し込んだ。
そこはシャワー室だった。
背後で扉が閉まり、わたしは目の前の鏡を見つめた。
疲れた顔……。
少し痩せた頬に手をやりながら、深いため息をつく。
今のわたしは、まるで育児に疲れた三十路の主婦のように見える。
自分の憔悴しきった姿に、監禁生活がどれだけ心身に負担を与えたかを痛感した。
……そうだ、こんな感慨にふけってる場合じゃない!
制限時間はたったの十分。
その間にシャワーを浴びて、汚れた髪と身体を洗わなければならない。
「熱っ……」
シャワーのお湯はかなり熱く設定されており、ちょうどいい温度になるまで少し待たなければならなかった。
今にも男が室内に入ってきて、わたしの腕を掴むのではないかとヒヤヒヤする。
備え付けのシャンプーで髪を洗い、ボディーソープで身体を洗った。
本当は湯船に浸かりたいが、シャワーを浴びられただけマシだと思うことにしよう……。
わたしはシャワー室から出ると、用意されていた白いワンピースに着替えた。