檻の中



 それから、山口はわたしに心理テストを受けさせた。


 これが何を意味するかは分からないが、検査の一部なのだろう。


 テストが終わると、山口は「そこで待って」と言い残し部屋から出て行った。


 落ち着かない気分で椅子に座り直し、何度もため息をついた。


 ドアを開けて逃げたところで、大柄な男に捕まってしまうのがオチだろう。


 “お仕置き”をされるかと思うと、恐ろしくて動く気にもなれない。



 何気なくテーブルの下に手を這わせると、指先が何かに当たった。


 引っ張り出してみると、それは小さく丸められた紙切れだった。



 ……何だろう?



 わたしは首を傾げながら紙切れを開いた。



『この手紙を読んでくれてありがとう。


私は奴らにゆうかいされて、ムチで何度も打たれた。


全裸にされて、背中の皮がむけるまで何度も何度も……。


うそをついたのと、売れなかったから。


きっと、私は処分される……。


奴らは悪魔。死んだら呪ってやる……!!』



 ミミズが這っているような弱々しい文字から、凄まじい憎悪の念が伝わってきた。


 わたしと同じように誘拐された少女が書き残した手紙──。


 鞭に打たれる哀れな少女の姿を想像し、胸が苦しくなった。


 “売れなかった”……。


 やはり、悪い予感は当たっていたと確信する。



 わたしたちは、人身売買のために誘拐されたのだ──。





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