檻の中
オークション
ズキッ……。
疼くような鈍い頭痛で目が覚めた。
わたしはこめかみに手をやりながら、ゆっくりと身体を起こした。
最初の檻の中に戻されていた。
コンクリート打ちの地面に寝かされていたせいで、身体の節々が痛い。
これからどうなるの、わたし……。
体育座りをして、ぎゅっと自分の膝を抱きしめる。
どんな“お客”に買われるのか、それが運命の分かれ道のような気がした。
もっとも、人身売買に携わる人間にまともな人がいるとも思えないが……。
わたしは深く息を吐き出し、両手を合わせてひたすら祈った。
お願いします、神様。
わたしと裕太をお助け下さい……。
どうか、どうか──!
そのとき扉が開いて、大柄な男が姿を現した。
よく見ると、今までの男とは別人だった。
しかしプロレスラーのような体格は大差ない。
「206番。時間だ、こっちに来い」
「きゃっ……やめて、痛い!」
荒々しく首根っこを掴まれ、そのまま強引に歩かされる。
男は悲鳴を上げるわたしをジロリと睨み、黙れと言うように人指し指を立てた。
髪の毛が引っ張られて涙が出そうになるほど痛い。
裕太と父親以外の男が嫌いになりそうなくらいの乱暴さに、嫌悪感と恐怖が膨らんだ。
男に押されるようにして薄暗い廊下を進んでいく。
突き当たりの扉の前に来ると、男は指紋認証システムに親指を押し当てた。
ビィーッと低い電子音とともに、扉のロックが外れる音がした。
扉を開けた途端、マイクを通した音声と熱気が流れ込んできた……。