檻の中




「206番には、同級生の恋人がいます。212番の片桐裕太です」


 司会者がそう言うと、観客席からどよめきとため息が聞こえてきた。


 モニターに映し出されたのは、久々に見る裕太の姿だった。


 ぐったりした様子で、灰色の壁に背中を預けている。



「……裕太っ!」


 わたしは胸に熱いものが込み上げてくるのを感じながら、必死に身を乗り出した。


 夢にまで見た、愛する人の姿……。


 だいぶ憔悴しているが、彼の無事が分かって全身の力が抜けそうなほど安堵した。


 わたしは知らないうちに、ポロポロと涙を流していた。



「しかしながら紳士の皆様、ご安心を……。綿密な検査の結果、206番は処女(バージン)であることが判明いたしました!」


 男の言葉に、観客席からわぁっと歓声が沸き起こる。


 いい大人がわたしのような少女を品定めする不気味な光景に、肌が粟立っていく。


 あの検査はそのためだったのね……。


 膣に冷たい器具を突っ込まれたときの痛みと屈辱が生々しく蘇り、わたしは椅子の上で身をよじった。



「さぁ、皆様。この美しい少女にいかほどの値打ちがあるのか、今一度お考え頂きましょう。目が肥えた私から見ても、ダイヤモンドの原石と同じくらいの価値があります……」


 男が自分の言葉に酔いしれながら、わたしの方をうっとり見つめてくる。


 たとえ幾らで買われても、その先にあるのは地獄だけ……。


 わたしは唇を噛みしめ、震える手をギュッと握りしめた。



「それでは、オークションを始めましょう!」


 ファンファーレが鳴り響くと、場内はさらなる熱気に包まれた。





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