檻の中



 全身に傷やアザがあり、足元には血だまりが出来ていた。


 ろくに食べさせてもらっていないのだろう、少女は痛々しいほど痩せ細っている。


 画面の端から鞭が振るわれ、少女の身体を容赦なく打った。



『ぎゃあっ!』


 首を絞められた鶏のような声が響く。


 わたしはビクッとして、耳を塞ぎたくなった。


 今回は両手を固定されても、変な目薬をさされてもいない。


 しかし、イシザキの視線を背中が焼けるほど感じて、画面から目を逸らしてはいけないと自分に言い聞かせた。



 鞭を打たれるたび、少女が痛ましい悲鳴を上げる。


 皮膚がミミズ腫れになっていた。



『ううっ……もう、やめて下さい……』


 少女がすすり泣きながら、姿の見えない主人に懇願する。


 その顔は殴られ続けたのか、紫色に腫れ上がっていた。


 なんて酷い……!


 怒りと恐怖が同時に込み上げてきて、勝手に身体が震えてしまう。
 

 鞭打ちの刑がしばらく続いた後、少女は気を失ったのか動かなくなった。



 まさか……死んでないよね?



 息を飲んで少女の様子を窺っていると、画面の端に主人らしき人物の後ろ姿が映った。


 小柄でやや背が曲がっている……老人?


 仕立ての良さそうなツイードのジャケットに、赤いベレー帽を身につけている。


 老人風の男は無言のまま少女を眺めていたが、手にしていた湯気の立つヤカンを持ち上げると──



『ひぎゃあああああッ!!』



 躊躇なく、少女の身体に熱湯を浴びせた。


 焼き印を押されたときの苦痛が蘇り、わたしの中に戦慄が駆け抜ける。


 もちろん、熱湯の方が数倍キツイだろう。 


 少女の身体が大きく跳ね上がり、激しく痙攣する。

 

『熱い、熱い、熱いぃいいッ! ひぃッ……痛い、痛い、痛いよぉおう……うわあぁあああッ!!』


 少女は子供のように泣き叫びながら、髪を振り乱して苦悶に顔を歪めた。


 熱湯を浴びせられた身体は赤く腫れ上がり、見るも無惨な状態になっていた。






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