檻の中
ここの主人たちは、少女を買ってこんな酷い目に遭わせているのだ。
連中の欲望やストレスの捌け口にされるために、わたしたちは誘拐された……。
暗く重い気持ちで画面を見つめていると、少女に異変が起こった。
大きく口を開けて、しきりに荒い呼吸を繰り返している。
すごく苦しそうで見ていられなかった。
皮膚の大半が火傷しているのだから、想像を絶する苦痛だろう。
少女は過呼吸になっているようで、涙とヨダレを流しながら必死に空気を吸い込んでいた。
足元に滴が垂れ落ち、失禁しているのだと気づいた。
顔が紫色から赤く変わり、全身がビクビクッと大きく痙攣を始める。
『ひぎぃえええええッ!!』
最期に人間離れした絶叫を轟かせ、少女はガックリと頭を垂れて力尽きた。
これで、人間の死に直面したのは二回目だ。
映像を通してとは言え、わたしを打ちのめすのに十分なくらいショッキングな光景だった。
映画やドラマとは違う、本物の死……。
それも、被害者は自分と同年代の少女。
寒くも何ともないのに、わたしの身体はブルブル震えて仕方がなかった。
「酷い……。人間じゃないわ、この人たち。同じ目に遭えばいいのに!」
感情が昂ってきて、イシザキの存在も忘れて思わず口走った。
「こんなものは序の口だ。最初からヘヴィー級の映像を見せたら、きっとお前のように柔な精神構造の素人は錯乱してしまうだろう」
いつの間にか隣りに立ったイシザキが低い声で言い、ニヤリと意地悪く笑う。
つまり、さらに恐ろしい拷問をされてる子がいるってこと……?
わたしは気が滅入って、大きく息を吐き出した。
もう見たくない……!
しかし、そんなことを言えば今度はわたしが拷問にかけられるかもしれない。
見ているだけの拷問か、される拷問か──。
どちらがマシかなんて、考えなくても明らかだった。
何も言わずに俯いているわたしを一瞥すると、イシザキは続けて映像を流した。
目を開けたまま、意識を途切れさせることが出来たらどんなに楽だろう。