檻の中



 気づいたらイシザキの姿はなく、モニターの画面も暗くなっていた。


 泣き疲れて眠ってしまったらしい。


 グスッと鼻をすすり、濡れた頬を手の甲で拭う。


 鈍い頭痛に顔を歪めながら、わたしはふらふらとバスルームに入った。


 鏡に映った自分の顔に驚いた。


 腫れた瞼に、赤らんだ頬……。


 髪が額に貼りつき、涙か汗の結晶が顔のあちこちに浮かんでいる。



 シャワーを浴びながら、わたしは抑えがたい衝動と必死に戦っていた。


 今すぐ部屋を飛び出して、裕太を助けに行きたい。


 しかし、闇雲に動いても意味がない。


 どうすればいいの……?


 シャワーを終えて、最後の一枚である替えのワンピースに袖を通す。


 何気なくカゴを覗くと、洗濯物が溜まっていた。


 洗わないと次の着替えがなくなるし、やがて下着やバスタオルも尽きるだろう。


 でも、それが何だって言うの?


 ちっぽけな心配をしている自分に腹が立つと同時に、可笑しくなってきた。


 最低限の生活を許されているから、感覚が鈍ってきたのかもしれない。


 緊張感を失ったら終わりだと自分に言い聞かせる。


 食糧の残りを数えながら、ビスケットを時間をかけて食べてお腹を満たした。


 この食糧が尽きたら、わたしはどうなってしまうのだろうか……。


 長く見積もっても、数日しか持ちそうもない。


 餓死させられるのか、新しい食糧が与えられるのか。


 イシザキの言動は読めず、その企みもいまだに分からなかった。


 一つだけ確かなのは、わたしの命は依然としてイシザキの手中にあると言うこと……。



 やがて、この監禁生活にも変化が訪れるのだった。







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