檻の中
イシザキの後について、廊下を進んで行く。
突き当たりの扉をカードキーで開けると、階段が下に向かって伸びていた。
地下道のような場所に出て、何度も角を曲がる。
誰もいない……。
地下道に二人の靴音だけが響く中、わたしは考えを巡らせていた。
行動範囲が広がった分、チャンスも増えるのではないか。
スクールに行けば、この狂った世界の情報を得られるかもしれない。
裕太の居場所を突き止めて、一緒にここから脱出するのがわたしの願いだ。
そのためなら、多少のリスクも覚悟の上……。
しかし首輪の存在を思い出し、早くも決意が揺らぎそうになった。
この首輪を着けている以上、永久にここから出ることは不可能だろう。
逃げようとして、イシザキに毒殺されるのがオチだ。
「道は覚えたか」
「……えっ?」
突然イシザキに話しかけられ、ギクリとして立ち止まる。
覚えたも何も……。
返事に窮していると、
「一本道だから、迷う馬鹿はいない」
イシザキが嫌みっぽく笑う。
それにしても、こんなに薄暗くネズミが出そうな地下道を通らないといけないなんて……。
停電になったらと考えるだけで恐ろしい。
「明日からお前一人で行ってもらう。ただし、下手な真似をしたら……分かってるな?」
イシザキに低い声で脅され、思わず固まってしまう。
ぎこちなく頷いたわたしを見て、目の前の扉を再びカードキーで開けた。
「ここがタウンだ」
扉から出たイシザキの後に続いて、わたしは恐る恐る未知なる世界へと足を踏み出した。