檻の中



 昼休みになり、わたしはあることに気づいた。


 お弁当、持って来てない……。


 そもそも、部屋にキッチンもなければ食材もないのだが。


 周りを見ると、お弁当を持参している子が多いようだ。


 ……食パンでも持って来れば良かった。


 小さく鳴るお腹をさすりながら、わたしは途方に暮れていた。



「あたしたち学食に行くけど、ジュリも一緒に行く?」


「行こう、行こう!」


「えっ……あ、ちょっと」


 冴子とみるくに引っ張られるようにして、わたしは教室から出た。


 学食って……お金持ってないのに。


 食券を買う二人の後ろで、内心ドキドキしながら待っていた。



「ほら、ジュリ。あんたも買いなよ」


「わ、わたし……」


「あぁ、そこにいましたか。ジュリエットさん。イシザキ氏からお預かりしたものを渡すのを忘れていました」


 白川が手を挙げながらわたしに近づいてきて、英字新聞の包み紙を差し出した。


 何これ……?


 戸惑うわたしをよそに、白川は役目を終えると足早に去って行った。



「ジュリエット、こっちこっち!」


 みるくの声に振り向くと、二人はすでにテーブルに着いていた。


 わたしは包み紙を持ったまま、いそいそと同じテーブルに座った。



「なぁに、それ?」


 冴子がカレーライスを食べながら、興味津々と言った様子で包み紙を指差す。


 みるくはナポリタンをフォークに巻きつけていた。



「えっと、ご主人様からの差し入れみたい」


「いやーん。優しい~」


 甘ったるい声を出すみるくに苦笑しながら、わたしは慎重に包み紙を開けた。


 イシザキのことだから、食べ物ではないかもしれない。


 しかし予想に反して、ラップに巻かれた美味しそうなサンドイッチが現れた。


 レタスやハムやチーズが挟んであり、食欲を誘う。


 食べようとして、紙切れが入っていることに気づいた。


 
『そいつは俺が作ったが、何も疑わずに食え。明日からは食券を使え』



 意外にも達筆な字でそう書かれており、包み紙の奥に十回分の食券が入っていた。


 イシザキの手作り……。


 何か裏がありそうだと思いつつ、わたしは恐る恐るサンドイッチにかじりついた。



「……んっ!?」





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