檻の中
一人で通る地下道はさらに不気味だった。
夢に出てきた池を思い出し、わたしは小さく身震いした。
頭蓋骨が無数に沈んだ池……。
一体、何を暗示しているのだろう?
ただの夢にしてはやけにリアリティがあった。
わたしもいずれ、ああなると言う未来を予知しているのだろうか。
……だとしたら恐ろしい。
頭の中から邪念を追い払い、ひたすら足早に進んで行く。
等間隔に並ぶ薄暗い蛍光灯だけが頼りだった。
幽霊が出てもおかしくないくらい、辺りはひっそりとしている。
こんな所に閉じ込められたら、それこそ発狂してしまうかもしれない。
ふと、蛍光灯が音もなく消えた。
「……ひっ!」
唐突に訪れた暗闇に、わたしは恐怖のあまり立ちすくんだ。
停電──だろうか?
最悪の事態が現実に起きてしまった今、どう対処すれば良いのか全く分からない。
どうしよう……。
パニックから動悸に襲われ、息苦しくなってきた。
「ハァ、ハァ……助けてっ……」
しゃがみこみ、震える声で助けを求める。
誰もいないのは分かっているのに……。
カチッと音がして、わたしの足元が照し出された。
光の射している方向に視線を向けると、黒い人影がぼんやりと浮かんで見えた。
もしかして、イシザキだろうか?
そんな期待と不安を入り交じらせながら、人影の正体を探ろうと目を凝らした。
「……僕が助けてあげようか?」
ちょっぴり幼さの残る、優しげな声がわたしの耳をくすぐった。
……違う、イシザキじゃない!
イシザキではないと分かった途端、なぜか頭の中で警鐘が鳴り響いていた。