檻の中
蛇が苦手なわたしは、悲鳴を上げずにはいられなかった。
しかも、かなり大きい。
すぐさま飛び退き、蛇から目を離さずに後ろ向きに歩いた。
何でこんな所に蛇がいるの……?
朝はいなかったのに。
もしかして、ヒカルの仕業だろうか。
そう思ったとき、蛇が鎌首をもたげて赤い舌をチロチロ出した。
ゆっくりと長い体をくねらせながら、音もなく近づいてくる。
「や、やめて……来ないで!」
逃げたいのに、膝が震えてうまく動けない。
……蛇に襲われて死ぬの? わたし。
そんなの、死ぬに死にきれない。
ふと、カチカチ……と時計の針を刻むような音が聞こえてきた。
その音に合わせて、わたしの心臓も小刻みに鼓動する。
蛇が近づくとともに、その音も大きくなった。
この音は……まさか……。
「……ひっ! 助けてぇっ」
わたしは前に向き直り、弾かれたように走り出した。
その瞬間、背後で風船が割れたような大きな破裂音が響いた。
「きゃっ!」
前のめりに倒れながら振り返ると、蛇が木っ端微塵になっていた。
地面に赤黒い血が広がっていく。
「ハァ、ハァ……」
わたしは息を弾ませながら、唖然とその光景を見つめていた。
時限爆弾が埋め込まれた蛇を放すなんて、ヒカルは一体どういうつもりなのだろう。
タイミングが悪ければ、大ケガをしたかもしれない。
今度会ったら問い詰めてやる……!
わたしは怒りとショックで身体が震えそうになりながら、スカートの汚れをはたいて立ち上がった。
早く部屋に戻って、シャワーを浴びたい……。