檻の中



 あんなに優しくて格好良かった裕太が、別人のように荒々しく獰猛になっている。


 わたしは残酷な現実を受け入れられず、放心状態で画面を見つめていた。


 髪を振り乱して興奮する彼の姿が涙で滲んでいく。



『来て……ロミオ。愛し合いましょう、いつものように』


 リンが両手を広げて裕太を誘う。


 カメラを意識した、計算ずくのセリフと行動に思えた。


 わたしが見ているのを知ってて……!


 悔しさのあまり、ギリッと歯ぎしりをする。


 獣のように激しく抱き合う二人を、わたしは胸の奥の疼きを感じながら見つめていた。


 背中に爪を立て、首筋に歯を立て、苦しげな呻き声を上げる。


 愛し合っていると言うより、感情を剥き出しにして格闘しているように見えた。


 一体、リンの狙いは何なのだろう?


 裕太を自分のものにしたいと言う支配欲と、独占欲……。



「リンは、中国人マフィアに育てられた。実の親からは虐待を受けており、保護したときには全身に生傷があったらしい」


 イシザキの言葉がぼんやりと遠くの方から聞こえた。


 どうして、そんな話をするの?


 リンの生い立ちなんか、わたしには関係ないのに……。



「オークションで気に入った少年を買い漁っては、自分の思い通りに調教するのがあの女のやり方だ」


「調教……」


 裕太はペットでも、奴隷でもないのに。


 いくら哀れな環境がリンを歪めたのだとしても、罪のない人の自由を奪う権利はない。


 ましてや調教なんて……。


 イシザキが何を思ってそんなことを言ったのか分からないが、わたしは絶対にリンを許さない。





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