檻の中
このままだと、裕太の心はリンに傾いてしまうかもしれない。
檻の中で自由を奪われ、意のままに操られているのだ。
今の裕太にとって、主人のリンが全てだろう。
イシザキがわたしの全てであるように……。
そう思うと仕方ないが、やはり悲しいし悔しい。
わたしたちは突然引き裂かれながらも、今日までどうにか生き延びてきた。
生きてさえいれば、必ず運が巡ってくる。
そう信じて……。
「ジュリエット。俺に報告することがあるんじゃないのか」
ふいに画面が暗くなり、イシザキの声が静かに響いた。
わたしはハッと顔を上げ、スクールで起きたおぞましい出来事を思い出した。
「指っ……。サンドイッチに人間の指が入ってたわ!」
言いながら感触が蘇り、吐き気を催しそうになった。
イシザキは腕を組んだまま、表情を変えない。
「だから?」と言わんばかりにわたしを見つめている。
「俺が言っているのは、そのことじゃない。……あの指の持ち主について知りたいのか?」
イシザキの言葉に、わたしは青ざめながら勢い良く首を振った。
……知りたいわけないじゃない!
指の持ち主はきっと、もうこの世にはいないのだろう。
「えっと……ヒカルくんの、こと?」
「奴はある意味、ミスターBよりタチが悪い。無邪気な分、手加減と言うものを知らない」
イシザキの言葉に、わたしは納得して頷きかけた。
蛇爆弾に危うく巻き添えになるところだった。