檻の中
そのことを話すと、イシザキは「始末に負えないガキだな」と口元を歪めただけだった。
ミスターBのときとは違う反応に、わたしは少し不満を覚えた。
ヒカルが子供だからだろうか?
「……わたし、下手したら死んでたかも」
「爆竹と同じようなものだ、死にはしない」
イシザキにあっさり論破され、口をつぐむ他なかった。
とにかく、源ヒカルには敵意を抱いていないらしい。
「スクールはどうだ? お前の仲間が沢山いただろう」
イシザキが意地悪な笑みを向ける。
そりゃあ、わたしのような子は沢山いたけど……。
「みんな、監禁生活に慣れてしまったみたい。どうかしてるわ」
スカートの裾を握りしめ、視線を落とす。
主人のことを嬉しそうに話す冴子やみるくの笑顔が脳裏に蘇った。
わたしもいつか、あんなふうになってしまうのだろうか。
「どうして、わたしをスクールに……?」
「お前の本分は学生だ、ジュリエット。学業に徹するのは当然の務めだろう」
確かにその通りなのだが、この世界で学校に通ったところで意味がないのではないか。
未来が見えない、この閉ざされた世界で……。
「俺は動物を飼っているわけじゃない。スクールで一般教養を身につけ、特待生を目指せ」
「特待生?」
首を傾げるわたしに、イシザキが意味ありげな笑みを浮かべた。
「特待生に選ばれると学費が免除になり、教員試験を受けることが出来る。反対に、落第すれば拷問にかけられる」
「えっ……」
拷問と言う言葉に絶句してしまう。
やはり、ただの学校ではなかったのだ。
わたしは暗い気持ちになりながら、逃げるようにスクールから帰って来たことを後悔した。
白川に悪い印象を与えたかもしれない……。
何とか、落第だけは避けなければ。