檻の中



 “二度と話しかけるな”……その言葉が頭の中でぐるぐる回っていた。


 真っ暗になった画面に、惨めな表情の自分の姿が映る。


 裕太があんな暴言を吐くなんて信じられなかった。


 それだけ追い詰められていると言うことだろうけど、わたしはショックで冷静さを失っていた。



「裕太……。わたしのことが嫌いになったの?」


 声に出した途端、涙が溢れ出てきた。


 裕太の姿はもうないけど、わたしはずっとモニター画面を見つめ続けていた。



「そのうち、リンはロミオの子供を産むかもしれないな」


 イシザキの皮肉混じりの言葉が聞こえたが、わたしは反応することすら出来なかった。


 子供……。


 そう言えば、遊園地の子供たちは一体何だったのだろう。


 裕太のことを考えたくなくて、意識を無理やり他のことに移した。



「……小さな子たちが遊園地にいたの。こんなところに、子供がいるなんて」


 首を振りながらため息混じりに言う。


 少し間を置いて、イシザキが静かに口を開いた。



「ここにいる子供たちは、源ヒカルと同じだ」


「……え?」


 言葉の意味が分からなかったが、イシザキはすでにわたしから視線を外していた。


 血で汚れた服を入れた紙袋を手にすると、部屋から出て行ってしまった。


 一人残されたわたしは、のろのろと立ち上がりシャワーを浴びた。


 いつまでこんな生活が続くのだろう。


 最初は死にたくないとか痛いのは嫌だとか思っていたけど、行動を起こさない限り一生檻の中に入れられたままだ。


 命を賭けて、逃げるしかないのかもしれない……。


 自暴自棄とは少し違う、緊張の糸がぷつりと切れたような気持ちだった。




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