檻の中
「ちょっくら、ここに寄ってくか」
独り言のように言うと、ラムチョップは『託児所』とプレートのついたドアを開けた。
部屋を覗き込むと、小さな子供たちが積み木や滑り台などで遊んでいた。
「あっ、ラム兄ちゃんだ!」
「一緒に遊ぼう!」
ラムチョップに気づいた子供たちがおもちゃを放り出して、こちらに駆け寄ってくる。
「よしよし。おめーら、いい子にしてたか? ドーナツを買ってきてやったぞ~」
ラムチョップが紙袋を見せると、子供たちから歓声が上がった。
食べ物で釣るのね……。
わたしは白い目で、カラフルなドーナツを子供たちに手渡すラムチョップを見ていた。
しかし、子供たちと一緒になって楽しそうに遊んでいる彼を見ているうちに、表情を和らげている自分に気づいた。
本当に子供が好きなんだ、この人……。
何となく複雑な気持ちになった。
この子たちは、きっと“檻の中”で生まれたのだろう。
外の世界を知らないのかもしれないと思うと、わたしは胸が痛くなった。
一生、ここから出られない子供たち。
外の世界を知っているけど閉じ込められているわたしから見たら、穢れを知らない無垢な彼らが少し羨ましく感じた。
……ううん、こんなの異常だわ。
強く思いながら、ラムチョップと子供たちを見つめた。